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覚醒時ブラキシズムとTCH~3~

  さて、覚醒時ブラキシズムであるTCHは治せるのか?また、治せるならどうやって治すのか?という疑問を今日のテーマとしよう。

 答えは「治せる」だ。なぜなら、覚醒している昼間は意志の力で自分の行動を制御できるからだ。人は自分の行いが良くないといったん気づいたら、努力して悪い行いをあらためることは可能なのである。では、どうやって治すのか?その具体的方法とはこうだ。

 第1ステップ:歯を接触することが悪い効果をもたらすことをまず患者に理解してもらう。

 第2ステップ:歯を接触させていることを気づかせる(意識化訓練)。同時に、歯を接触させていない状態を体感してもらう(競合反応訓練)。

 第3ステップ:繰り返しさせる(強化)。

 先ず、歯をたとえ軽くではあっても、接触させることは全然よくないことを理解してもらう。理解してもらえなければ話にならない。絶対にその習慣は治らない。本人が自覚することによってはじめて治せる。治す主体は治療者ではない。本人だ。本人が自分の悪い習慣を治すのだ。ここのところは大切だ。

 次に、本人に歯を接触させている事実を自覚してもらう。歯を接触させていることに気づいたら、その逆のこと、つまり歯を接触させていない状態とはどんな感じなのか、とういう感覚を体感してもらう。この真逆の状況実現を実践することを「競合反応訓練」という。ところで、歯を接触させていない状態を簡単に実感出来る方法として、「舌の吸盤化」訓練がある。これは舌を持ちあげて舌背を口蓋粘膜に触れさせ、吸って陰圧をかけることで舌背が口蓋粘膜に吸い付くようになる訓練だ(2)。これは舌の低位を是正し、口呼吸を鼻呼吸に変化させるのに有効な方法なのだが、この舌背を口蓋に触れさせる訓練は、歯が接触していない状態を体感させる良い訓練でもある。舌を口蓋に触れさせると歯は当たらなくなるのである。

 最後の三番目のステップで、2のステップを繰り返し、脳と体に叩き込む。

上記のごとき方法を行動変容法という。

参考文献:

(1)西山 曉. 覚醒時ブラキシズムとTCH.The Quintessence.Vol.35 No.7. 42-55.2016

(2)宗廣素徳著.舌は下ではなく上に. 文芸社. 東京. 2011.

覚醒時ブラキシズムとTCH~2~

  前日に書いたように、ブラキシズムは顎関節症を含めて顎口腔領域にさまざまな害を及ぼすので、しっかり対応しなければならない問題である。ブラキシズムは非機能的な、つまり無意味な反復される歯の接触であり、強い力で行われれば「食いしばり」、弱い力で行われれば「TCH」と呼ばれるということだ。だから「食いしばり」も「TCH」も、両方ともブラキシズムだ。そして、「食いしばり」などの強い力での咬みしめは短時間しか出来ないのに対して、弱い力の「TCH」は長時間持続可能だ。あるデータでは、最大咬合力の40%の力で咬み続けられる時間はわずか1.5分程度であるのに対して、7.5%の力で咬み続けられる時間は、その100倍の約2.5時間であるといわれている。

 ところで、TCHはなぜ起こるのだろう?

 一つの原因は、「緊張性歯根膜咬筋反射」だ。これは、上顎前歯部を舌側から唇側に向かって弱い力を加えると、咬筋の持続性筋活動が誘発される現象をいう。この、上顎前歯部を舌側から唇側に向かって弱い力を加える状態は、頭部を前傾させてややうつむくような姿勢をとる場合に生じやすいと思われ、デスクワークや携帯端末操作などが該当する。つまり、このような前傾姿勢が「緊張性歯根膜咬筋反射」を起こしTCHが起こるわけだ。

 二つ目の原因は、ストレスや過度の緊張と集中だ。集中作業を行うと咬筋の筋活動がレベルが増加するという報告がある。

 三つ目の原因は、心理社会的要因だ。具体的には、職場の対人関係、仕事のコントロールの度合い、働きがい、疲労感、不安感、抑うつ感、上司や同僚のサポートの有無、などがあげられる。こういった心理的、社会的的要因があると歯を接触させる行動を起こし易いと考えられている。

 四つ目の原因は、これは最近いわれてきていることなのだが、すれ違い咬合や咬合支持の喪失(難しい表現だが、上下の奥歯がきちんと対向しないため、咬んだ時に下顎位が上顎に近づきすぎる状態のこと)や不安定な義歯もTCHを引き起こしやすいことが報告されている。

参考文献:(1)西山 曉. 覚醒時ブラキシズムとTCH.The Quintessence.Vol.35 No.7. 42-55.2016

覚醒時ブラキシズムとTCH~1~

 歯科臨床においてブラキシズムは厄介な問題なので、今日のテーマはブラキシズムだ。

 どういうふうに厄介かというと、ブラキシズムは補綴物の破折や脱落、歯冠破折や楔状欠損(WSD)、知覚過敏、歯周病の悪化、顎関節症、非感染性の歯痛、舌痛など、顎口腔系にさまざまな害をもたらすのだ。

 「ブラキシズム」は、「反復性に上下の歯を当てておこなう歯ぎしりやくいしばりといった咀嚼筋活動を主体とした非機能的運動の総称」と定義され、睡眠中に行われる睡眠時ブラキシズムと昼間の起きている間に行われる覚醒時ブラキシズムに区別される」と定義される(1)。とまあ、難しそうないいまわしだが、ひらたくいえばブラキシズムとは歯ぎしりや食いしばりのことだ。歯ぎしりや食いしばりは夜中に行われると思われがちだが、昼間にも行われる。それが覚醒時ブラキシズムだ。

 ところで、「食いしばり」という行為は相当強い力で行われるイメージがあるが、患者の意識調査では、患者が「くいしばり」という言葉からイメージする力は最大咬合力の70~80%であることがわかっている。けっこう強い力で歯をあてるイメージだ。しかし、実際にはこれよりもはるかに弱い力であっても長時間歯を接触させると顎口腔領域に悪い影響が出ることがわかっている。この弱い力で歯を接触させる行為が「TCH:Tooth Contacting Habit」だ(2)。

 実は、機能的な歯の接触(咀嚼や発音)の一日の総時間は平均17.5分といわれている。けっこう短時間だ。食いしばりなどの非機能的な歯の接触もこれと同様に強い力で当て続けることは難しいと考えられるが、弱い力でならそれが可能だ。それがTCHなのだ。だからTCHとは、「歯の接触の持続を繰り返す習慣的行為」のことだ。このTCHは、顎口腔領域に害をもたらす原因として、最近、注目されてきている。

 

参考文献

(1)Lobbezoo F, Ahlberg J, Glaros AG, Kato T, Koyano K, Lavigne GJ, de Leeuw R, Manfredini D, Svensson P, Winocur E. Bruxism defined and graded: an international consensus.J Oral Rehabil. 2013 Jan;40(1):2-4. 

(2)西山 曉. 覚醒時ブラキシズムとTCH.The Quintessence.Vol.35 No.7. 42-55.2016

 

閉塞性睡眠時無呼吸症候群OSAS~2~

  OSASの治療は、根本治療と対症療法に分けられる。根本療法とは、肥満が原因なら体重減少、鼻腔が狭い・扁桃が大きい・軟口蓋が長いなどが原因の場合は耳鼻咽喉科的手術、下顎が小さい・舌が大きいなどは口腔外科的手術が適応される。

 一方、対症療法には、医科で行う経鼻的持続陽圧呼吸療法(Continuous Positive Airway Pressure:CPAP),歯科で行う口腔内装置(Oral Appliance:OA)治療、側臥位での睡眠体位を指導する睡眠体位の指導などがある。

 CPAPは医科でのOSAS治療の第一選択である。これは、睡眠時にマスクをかぶり、CPAP装置と呼ばれる陽圧で送気する機械をマスクにつなげて、気道に陽圧の空気を送り込む治療法である。非常に効果が高いが、装着の違和感、鼻腔の乾燥、持ち運びの不便、空気が漏れる、など必ずしも使い勝手が良いわけではないようだ。

 一方、OAは口腔内に装着する装置によって気道を拡大するものである。保険で製作される一般的なものは上下のマウスピースが一体となっている下顎前方移動型である。これは上下の歯列にマウスピースを乗せ、下顎を前進させた状態で上下の装置をレジンで固定してしまうものである。そして、この装置を上下の歯列に適合するように装着することで下顎が前方に挙上されるわけだ(図参照)。OAの効果はCPAPのそれよりは弱いといわれ、軽度から中等度のOSASが適応と考えられる。

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a   下顎前方移動型OA     b  舌や軟口蓋が重力で落ち込み気道が閉塞した状態  c 下顎を前方移動することにより舌

軟口蓋が前方に移動し、気道が確保される (文献1より引用)

参考文献:  (1)坂井丘芳監修, 奥野健太郎 編, 睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置治療. 医歯薬出版. 2014 

閉塞性睡眠時無呼吸症候群OSAS~1~

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群OSAS(Obstructive Sleeo Apnea Syndrome)は、睡眠中の咽頭閉塞により呼吸と睡眠が障害されることから様々な症状を呈する全身疾患である。具体的には、いびき、昼間の眠気、睡眠中の無呼吸、睡眠中の息ぐるしさ、夜間の覚醒、頻繁な寝返り、起床時の頭痛、熟睡感の欠如、集中力の低下、倦怠感、起床時の口渇といった症状を呈する(1)。また、OSASは高血圧症、糖尿病、脂質異常症、動脈硬化、虚血性心疾患、不整脈、脳血管障害など、さまざまな合併症を引き起こす。重症のOSASではこれらの合併症により、死に至ることもある。

 合併症は低換気、すなわち酸素不足に起因するもので、酸素不足が睡眠時に繰り返し起こると交感神経が亢進し、血圧が不安定となり糖尿病の危険性や動脈硬化が促進し、不整脈や脳卒中も起こる。

 原因は太りすぎであることが多いが、やせていても下顎が小さいと起こる。これは、咽頭気道周囲の軟組織量と上顎・下顎・頸椎などの骨構造物の容量のバランスで決まる(2)。要は気道を構成する構造物を単純化すると硬組織(上顎骨・下顎骨と頸椎)はハコ、軟組織はニクとすると、ハコの内面にニクが張り付いているのだが、ハコが正常でもニクが多ければ気道は狭まり、ニクが正常でもハコが小さければやはり気道は狭まるというわけだ。

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               文献1より引用

参考文献:

  (1)坂井丘芳監修, 奥野健太郎 編, 睡眠時無呼吸症候群の口腔内装置治療. 医歯薬出版. 2014 

  (2)磯野 史郎. 閉塞性睡眠時無呼吸症:歯科医師の役割.  Dental Medicine Research 34(1): 2-5. 2014

 

 

臼歯の喪失は口呼吸を招くか?

  先日、口呼吸になる生活習慣を書いたが、今日は歯科的な原因で口呼吸を招く可能性があることに言及しよう。それは義歯だ。

 全部床義歯装着患者が夜間義歯を外すことにより開口状態になり、これが原因でドライマウスとなることがある(1)。また、部分床義歯でも同様で、臼歯部が欠損し咬合支持の喪失を伴う状況にある部分床義歯装着患者が夜間義歯を外した場合、睡眠時の強いかみ締めにより下顎頭の変位が起こり(2)、下顎が回転しながら気道方向に沈下した場合に開口状態となり、口呼吸に起因するドライマウスになる。

 

参考文献:

(1)北川 登. ドライマウスの原因と検査法. Dental Medicine Research 29(1):57-61,2009

(2)山下秀一郎、他. 臼歯部咬合支持の喪失に伴う咬みしめ時の下顎頭変位. 補綴誌. 51巻4号. 699-709. 2007

舌筋を鍛える「あいうべ体操」

 舌筋を鍛えるよい方法がある。未来クリニック 内科医 今井一彰先生考案の「あいうべ体操」だ。

 この方法は、1 「あー」と、口を大きく開く 2「イー」、と口を大きく横に広げる 3「ウー」と、口を前に突き出す。4「ベー」と、舌をつきだして下に伸ばす。1~4を一セットとし、一日30セット行う。ポイントは、大げさなくらい口を大きく動かすこと、一セットを4秒前後かけてゆっくり行うことだ。詳しくは、今井一彰先生の下記の書籍またはみらいクリニックHPを参照してほしい(1、2)。 

参考文献:

1 今井一彰著. 自律神経を整えて病気を治す口の体操「あいうべ」.マキノ出版. 東京. 2015.

2 みらいクリニックHP http://mirai-iryou.com/mc_aiube.html

口呼吸と鼻呼吸における舌位置の違いについて

 口呼吸は健康障害を招くので、鼻呼吸に変えることが望ましい。さて、ここで口呼吸と鼻呼吸の決定的な違いを確認しておこう。実は、口呼吸と鼻呼吸とでは舌の位置が決定的に違う。下図に示すように、鼻呼吸では舌が口蓋粘膜にぴったりと接触しているのに対して、口呼吸では舌は口蓋粘膜と接触していない。舌が口蓋と接触していないから気道に空気を送るために、鼻からでなく口を通過させてしまう。舌が口蓋に接触していれば、口からのルートは閉ざされ鼻から送り込むしかないので必ず鼻呼吸になる。結局、鼻呼吸になったり、口呼吸になったりするのは舌の位置がどちらの呼吸様式になるかを決定していたのだ。

 それでは、何が舌の位置を決めているのだろう?それは舌の筋肉(舌筋と舌骨筋群)の発達の度合いだ。舌の筋肉が発達していると、舌の形が充実し、ボリュームが豊かになるので舌を安静にした状態で舌背が口蓋に接触するようになる。舌の筋肉が未発達であったり、衰えたりすると、舌は下方に位置するようになり、舌背と口蓋の間にスキ間が出来るので口呼吸になるわけだ。

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     A:口呼吸   B:鼻呼吸

参考文献:(1)今井一彰. 自律神経を整えて病気を治す 口の体操あいうべ. マキノ出版. 東京. 2015.

口呼吸を招く生活習慣

 口呼吸が健康に悪いことは理解できたが、なにが口呼吸を招くのだろう?その前に、人間の本来の呼吸は鼻呼吸であることを確認しておきたい。生まれた時は人間は全員、鼻呼吸だ。それが、一生持続すればいうことはないのだが、多くの人の場合(約9割)、後天的に口呼吸に変化する(1)。それは一体なぜだ?

 今井一彰先生よれば、口呼吸は下記に挙げる悪い生活習慣が関係している。

1)よく咬まない:現代の子供たちは硬いものを咬まない傾向にあり、結果、舌や口の周囲の筋肉が衰え、口が閉じれなくなる。

2)ため息・喫煙:ストレスや過労からため息を多くついていると、舌が下がり、口が開くようになる。

3)うつぶせ寝・頬杖:うつぶせ寝や頬杖は顔の筋肉のバランスを崩し、結果、口が開きやすくなる。

4)よく話す・歌う・吹奏楽:おしゃべり好きの人やアナウンサー、また吹奏楽者は口だけで呼吸をするようになりやすい。

5)鼻づまり・鼻炎:鼻が使えないと、必然的に口から呼吸するようになる。

6)口を閉じる意識の低さ:昔は口がぽかんとひらいていると親や先生に口を閉じるように注意されたが、今はそういう大人が減ってきた。結果、口を閉じていないことが、みっともないことである認識が薄れ、口を開いている状態を普通と考える間違った意識が口呼吸を許す。

7)マスクの不用意な着用:マスクは線維を通過して空気を取り入れるので空気の量が不足し、口で呼吸を補うようになる。だから口呼吸になる。

8)激しいスポーツ・太極拳・妊娠時の呼吸法:激しいスポーツは鼻だけでは空気の取入れが不十分なので口から空気を取り入れるようになる。太極拳・妊娠時の呼吸法も口から吐くことを指導される。これが口呼吸を習慣づける。

 以上のような生活習慣が口呼吸をつくり出す。生活習慣は認知し、改めようとする行動を起こすことで変えることができるはずだ。

参考文献:(1)今井一彰. 自律神経を整えて病気を治す 口の体操あいうべ. マキノ出版. 東京. 2015.

口呼吸は健康に悪い

 「口呼吸が健康に悪い」ということが、よく言われるようになってきた。それはなぜなんだろう?今日のテーマはその問題だ。

あいうべ体操で有名な、みらいクリニック院長 今井一彰先生の著書によれば、口呼吸が発症に関与している疾患の一覧が紹介されている。それらを列挙すると、以下のような疾患が挙げられている。

 膠原病(関節リウマチ、エリテマトーデス、シェーグレン症候群など)、間接痛、花粉症、鼻炎、鼻づまり、アトピー性皮膚炎、湿疹、尋常性乾癬、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、気管支喘息、下痢、便秘、過敏性腸症候群、クローン病、胃炎、うつ病、パニック症候群、全身倦怠感、ドライマウス、口内炎、口唇ヘルペス、慢性副鼻腔炎、鼻茸(はなたけ)、いびき、睡眠時無呼吸症候群、不眠症、歯周病、虫歯、歯列不正、インフルエンザ、風邪、肺炎、気管支炎、上咽頭炎、痔、高血圧、糖尿病、腎臓病、肝炎、虫垂炎、冷え性、頭痛、肩こり、腰痛、顔の老化

 口呼吸が健康に悪い一つ目の理由は、免疫のシステムを損なうからだ。のどの奥には「ワルダイエルのリンパ輪」とうリンパ集団があるのだが、口呼吸だと病原菌が口から直接、このリンパ組織に到達し、感染を起こしてしまう。するとリンパ組織自体が病原菌のたまり場になってしまい、十分に働けなくなる。つまり、リンパ集団が感染巣となってしまいその結果、免疫の作用が低下する。これは深刻な問題だ。

 二つ目の理由は、そのリンパ集団の感染巣が「病巣感染」として作用し、のどとは別の皮膚や内臓にも慢性炎症を引きおこすことだ。病巣感染とは「身体のどこかに限局した慢性炎症があり、それ自体はほとんど無症状か、時に軽微な症状を呈するに過ぎないが、それが原因となって原病巣から直接関連がないと思われる遠隔の諸臓器に反応性の器質的あるいは機能的障害を起こす病像」と定義されるものだ。わかりやすく言うと、身体の一部に慢性の炎症があると、それ自体の症状は軽くても、これが原因となって他の臓器に病気(二次疾患)を引き起こすことだ。その機序としては、原病巣の病原菌が菌血症となって拡散することや、原病巣の細菌毒素などが障害を起こすこと、原病巣の原因菌が抗体産生を誘導してアレルギーを起こすことなどが考えられている。つまり、喉の慢性炎症が別の部位の慢性炎症を引きおこすわけで、これもやはり重大な問題だ。慢性炎症は糖尿病や動脈硬化、老化など、多くの疾患を引き起こすキーワードと考えられているからだ。

 三つめの理由は、自律神経を乱すからだ。口呼吸は体にストレスをもたらす。そしてストレスは自律神経を乱す。自律神経のうち、交感神経が過剰に働いたときにがんや心疾患、脳卒中、糖尿病などになりやすい。また、副交感神経が過剰に働けばアトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギー性疾患やうつ病を発症しやすい。

 四つめの理由は、歯周病やドライマウスになることだ。口呼吸は口腔を乾燥させるが(ドライマウス)、口が乾くと唾液の抗菌作用が低下し、歯周病になりやすくなる。

 五つ目の理由は、いびきや睡眠時無呼吸症候群になるからだ。口を開けて寝ると舌根が沈下し、気道の閉塞を招く結果、いびきや睡眠時無呼吸症候群になりやすい。

  以上のように、口呼吸は健康に悪いのだ。

参考図書:(1)今井一彰著.健康でいたいなら鼻呼吸にしなさい. 河出書房新社.2015.

 

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