ホーム>院長ブログ>院長ブログ>よく咬める咬合面形態について(2)
院長ブログ

よく咬める咬合面形態について(2)

 前回に引き続き、よく咬める第一大臼歯の咬合面とはどういった形をしているべきか?について考えてみよう。

 その前に、なぜ第一大臼歯なのか?だが、咬むパワーは第一大臼歯が最強だからだ。親知らずを除いた成人の永久歯列は上下で28本、片顎で14本の歯で構成されている(前歯6本、小臼歯4本、大臼歯4本)が、食物を粉砕圧搾する能力は、第一大臼歯が最も高いことが知られている。だから、第一大臼歯なのだ。

 ところで、第一大臼歯の咬合面は、機能咬頭と非機能咬頭に区別される。そして、機能咬頭は食物を粉砕し、非機能咬頭は食物が粉砕されるための保持の役割を受け持つ。そして、機能咬頭とは上顎口蓋側咬頭と下顎頬側咬頭であり、非機能咬頭は上顎頬側咬頭と下顎舌側咬頭なのである(図1)。

201712985039.jpg2017129162345.jpg2017129162531.jpg

 

 食物が潰されるためには、口を開けて下顎を下方に移動させ、最下方に達したら今度は、口を閉じて下顎を上顎に向けて上方に移動させ、最終的に下顎の歯を上顎の歯に打ちつけなければならない。この一連の下顎運動を咀嚼サイクルといい、前頭断面で観察した場合、不定形の涙滴状の形態をしており、開口路と閉口路は一致しない(図2)。

 上図の赤線部で食物を”ぐちゃっ”と咬み潰すためには、食物がそのエリアにとどまる必要がある。そのためには上下の歯が咬み合った時に食物が逃げないような閉塞空間が存在しなければならない。その閉塞空間は、”圧搾空間”呼ばれてており、それを構成する壁は、上顎第一大臼歯の近心頬側咬頭内斜面、近心口蓋側咬頭内斜面、および斜走隆線からなる。また、側方滑走運動運動から終末位の咬頭嵌合位にはまり込んでいく際、食物は閉塞空間に追い込まれるが、近心口蓋側方向のみに解放された空間が出現する。この開放された空間は食片の遁路であり、圧搾された食片は、近心口蓋側方向に流れて歯面から口腔内に流れ落ちていくと考えられる(図4)。

201712917335.jpg  図4は文献(2)より引用

 以上の事実から、「よく咬める咬合面形態とは?」の回答として結論づけられることは、上記の「圧搾空間を確実に出現させる」咬合面、ということになる。そして、その圧搾空間を確実に出現させる具体的なポイントとは、1)上顎の頬側咬頭が下顎の頬側咬頭を十分に被蓋していること、2)下顎歯列の咬頭が上顎の窩にきちんと嵌合していること、つまり正確な咬頭嵌合を再現していること、に他ならない。

参考文献:

(1)中村健太郎.なぜ第一大臼歯を保存しなければならないのか? the Quintessence. Vol.35. No.6. 50-54.2016. 

(2)渡辺淳史.側方滑走運動による上下大臼歯間の接触間隙の変化.補綴誌.39.517-529.1995.

 

 

トラックバック(0)

トラックバックURL: https://www.nakayamadental.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/808

ページ上部へ