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院長ブログ

炎症性サイトカイン

 歯周病の進行を分子的レベルで見ていきたい。そこで、今日のテーマはサイトカインだ。サイトカインとは、免疫システムの細胞から分泌される一連のタンパク質群で、特に標的を特定しない情報伝達を介在するものをいう。実に多くの種類のサイトカインが存在し、その多くは免疫や炎症に関係した働きをしている。歯周病を分子的に見るときに、このサイトカインと呼ばれる一連のタンパク質群がとても重要な役割をしているのだ。

 歯周病菌から放出されるLPSや絨毛が、炎症のイニシャルトリガーとして働き、マクロファージ表面に存在するTLR(Toll-like Receptor)といわれるレセプターを刺激し、マクロファージに前炎症サイトカインと呼ばれるTNF-αやIL-1βを産生させる。このTNF-αやIL-1βが、線維芽細胞に働きかけ、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)を産生させる。MMPは細胞外マトリックスを破壊する酵素だ。このMMPにより歯周組織の付着の喪失=アタッチメントロスが引き起こされる。また、MMPは、好中球、B細胞、形質細胞からも産生される。

  また、TNF-αのようなサイトカインは、破骨細胞も刺激する。その一方で、IL-1B,IL-6のようなサイトカインは骨芽細胞を刺激してRANKLを発現させることで、やはり破骨細胞を刺激し骨吸収を促進している。

 その一方、Th2やTregsと呼ばれる細胞(T regulatory cells)は、IL-4(インターロイキン-フォー)やIL-10(インターロイキン-テン)、TGF-βといったサイトカインを放出して、これらの作用により、骨吸収を抑制している。

 このように、サイトカインは、骨吸収というイベントにおいて、ポジティブな作用とネガティブな作用の両方に関与している。どうです、サイトカインの話はややこしいでしょう。

 歯周病はこの様に、サイトカインの結構、ややこしい働きの結果、その病態が作られるのだ。

 

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図は文献(1)より引用.

参考文献(1):Graves DT,Oates T,Garlet GP. Review of  osteoimmunology and the host response in endodontic and periodontal lesions. J Oral Microbiol  2011,3:5304-DOI:10.3402/jom.v3iO.5304.

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