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炭酸ガスレーザーをインプラントSLAサーフェイスに照射しても、レーザーはその生物学的適合性に影響しない

 炭酸ガスレーザーは殺菌作用があるために、インプラント周囲炎を起こしているインプラント表面のデコンタミネーションを目的に、炭酸ガスレーザーをラフサーフェイスに照射するというアイデアが当然浮かんで来る。その際、レーザーの殺菌作用以外の物理学的作用がインプラント表面性状に影響しないことが前提となる。インプラント表面性状は、短い治癒期間でオッセオインテグレーションが得られるよう、各メーカーがしのぎを削って開発競争を行ってきただけに、各メーカーとも生物学的適合性が格段に向上している。生物学的適合性をわかり易く言えば、すんなり骨と馴染んで素早く骨と結合する性質のことだ。レーザー光線がインプラント表面のマイクロな形態的あるいは化学的性状を変化させれば、骨芽細胞のチタン表面へのノリが悪くなり、結果としてオッセオインテグレーションが遅れるのだが、これは困る。

 SLA(Sandblasting Large grit and Acid etching)サーフェイスは、最も一般的で、代表的な生体適合性を向上させるための工夫を凝らして登場したインプラント表面性状である。当院で用いられているインプラントにもこの性状が備わっているが、炭酸ガスレーザー照射で生物学的適合性が変化しないか、気になっていたところだ。そんな折、炭酸ガスレーザー照射はインプラントSLAサーフェイスの生物学的適合性を変化しない、と報告した論文を見つけた。

 それは、6.0Wというかなりの高出力の炭酸ガスレーザーをチタンディスクに照射し、そのディスク上に培養骨芽細胞を乗せて、その増殖スピードを対照と比較した実験報告だ。結果は、炭酸ガスレーザーは培養骨芽細胞のチタンディスクへの接着を阻害せず、増殖スピードにも影響しなかった。

  レーザーは波長が長く大部分が水分に吸収されるため、インプラント表面温度はそれほど上がらない。照射しても熱が出ず、チタン表面の生物学的適合性に影響が及ばないとなれば、炭酸ガスレーザーはインプラント周囲炎のデコンタミネーションのツールとして有用といえそうだ。なんせ、レーザーはスイッチを入れて照射するだけ。だから、テクニック非依存的だ。そこがよいのだ。

 参考文献

(1)J Lasers Med Sci. 2013 Spring;4(2):86-91.

The Effect of Carbon Dioxide (CO2) Laser on Sandblasting with Large Grit and Acid Etching (SLA) Surface.

Foroutan T, Ayoubian N.

 

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