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2016年12月

歯科の3種の神器

 歯科の3種の神器というのがある。1 歯科用CT 2 マイクロスコープ 3 セレックなどのCAD/CAM、のことだそうだ。その中で、今日は歯科用CTについて書きたい。

 歯科用小照射野X線装置(CBCT)が開発されて15年以上が経った。自分は病院勤務医時代に医科用CTをずいぶん見てきたので、歯科用 CTの利点や欠点が良くわかる。  

 文献的なチェックを入れると、歯科用CTの利点としては、1) 解像度が高い、2)被ばく線量が少ない、3)撮影時間が短い、4)金属によるアーチファクトが少ない、5)軽量で設置面積が小さい、 6)導入費用や維持費や医科用CTに比較して安い、が挙げられ、その欠点としては、1)撮影範囲が狭い、2)軟組織の描出能が低い、3)CT値に医科用CTのような定量性がない、ということになる。 

 利点の1,2,3は撮影原理と関係しているが、旧来型医科用CTが横たわった被験者に対して、扇型のビームを頭から足先を貫く軸に対してらせん状にぐるぐると何回転もしながらゆっくり回転を繰り返して照射していくのに対して、歯科用CTは立位の被験者の頭の周りをコーン型(円錐形)のビームが1周するだけで撮影が完了する、という違いに起因する。歯科用コーンビームCTの体積素(ボクセル)は一辺0.1mm程度の立方体であるのに対して、旧来の一般的CTの体積素は0.4mm ×0.4mm ×0.4mm程度の大きさであり、解像度(空間分解能)は一般的に体積祖の大きさが小さいほど高いので、歯科用CTの方が解像度が高くなる。また医科用CTは広い面積のビームで、何回もぐるぐる回りながら広い範囲を照射するので、トータルの被ばく線量は医科用の方が多くなる。また、医科用CTはぐるぐる何周もするので、一周で完結する歯科用CTより撮影時間が長くなるのは当然だ。

 ただ、歯科用CTの利点に関しては、最新の最高性能の医科用CTでは、歯科用コーンビームCTの撮影時間の半分以下とする報告もあるので、あくまで旧来型の医科用CTと比較した場合の話だ。

 歯科用CTが圧倒的に有用と思えるのは、細かい部位を観察するときにその強みがいかんなく発揮される。たとえば、根尖病変の位置や形状は非常に明瞭に映し出される。根管の走行状態も一目瞭然に把握できる。また、歯周組織の残存状態、特に歯根周囲にどのような形態で骨が残っているか、あるいは骨が破壊されているかは的確に把握できる。骨が溶ける歯周病の実態をリアルにとらえるためには歯科用CTは非常に有用だ。根分岐部病変も三次元的に描出されるので、その存在を明確にとらえることが出来る。

 要するに、顎骨骨折や腫瘍の進展状態を把握する場合のように、頭頸部全体の広い範囲の探索には医科用CTが適している。一方、数本の歯の歯槽骨や根管内の状況についてのみ観察したい場合は、狭い範囲の照射で事足りる歯科用CTの方が適している、ということになる。そして、デンタルやパノラマでは診断しづらい歯および歯周組織の微細な異常に対して歯科用CTは明確にその存在を提示してくれるので、これからの歯科診療室には必須のアイテムであることは否定できない。

 

参考文献:歯科用コービームCTと医科用CTとの違い-その2ー.  佐野 司, 西川慶一. 歯科学報, 109(1):73-75 

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