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象牙質知覚過敏症(2)~その治療戦略~

  さて、象牙質知覚過敏症の治療戦略は、1 象牙細管を封鎖する 2 知覚を鈍麻する 3 細管内組織液を凝固させる なのだが、その具体的方法について述べたい。

 まず、一番目の象牙細管を封鎖する方法には、歯面に薬液を塗るだけの方法と、歯面に窩洞形成した後でセメント充填する方法がある。薬液を塗る方法は、歯面表層にカルシウム化合物を析出させることで細管入り口を封鎖するものだ。窩洞形成するものはグラスアイオノマーセメントやレジン系セメントで充填することで細管を封鎖する。この細管入り口を封鎖するものが、商品として最も多い。

 二番目の知覚を鈍麻する方法として、まず薬液塗布がある。これは歯面表層でなくそれを細管内部に浸透させ、知覚神経終末を鈍麻させるものだ。この薬液としては硝酸カリウムを有効成分とする製品が一般的である。また、Nd:YAGレーザーや半導体レ―ザーは深部に到達するので、レーザーのLLLT効果を利用して感覚受容器の鈍麻を図る方法もある。ただし、レーザーの条件設定によっては歯髄組織や歯周組織に壊滅的ダメージを与えるリスクがあるので条件設定には慎重になる必要がある。

 三番目の組織液を凝固させる方法としては、薬液を塗布して細管内に浸透させ、組織液を凝固させるものがある。この薬液に含まれている主成分は2つあり、一つは組織固定剤であるグルタールアルデヒド、もう一つは親水性モノマーであるハイドロキシエチルメタクリレート(HEMA)だ。接着性レジンのプライマーが歯肉につくと歯肉が白くなるが、これはHEMAなどの親水性モノマーのタンパク凝固作用によるもの。また、組織表面で吸収されるCO2レーザーを歯面に照射することでレーザーのエネルギーにより細管内組織液を凝固させる方法もある。この場合も、レーザー照射の条件設定を慎重にする必要があり、パワーが強すぎると歯質にダメージを加えるリスクがあるのはNd:YAGレーザーや半導体レ―ザーの場合と同じだ。

 最後に、これは重要なことなのだが、上記の3つの方法を実施するには順番があり、先ず「鈍麻」、次に「凝固」、そして最後に「細管封鎖」の順でおこなうことが大切だ。最初から細管入り口を封じ込めてしまっては、内部に薬液を浸透させられなくなるからだ。実際の臨床では、一度の知覚過敏処置では効果が不十分なことがあり、その際、複数の知覚過敏抑制剤を選択する場合は、上記の順番を遵守することが鉄則なのだ。知覚過敏抑制剤の作用機序をよく理解しておかないと、無意味な処置を施してしまいかねないので要注意だ。

  参考文献:

冨士谷盛興・千田 彰.象牙質知覚過敏症 第2版.医歯薬出版.2013.

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