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2016年10月

オステルメンター

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今日は,2カ月前に抜歯,即時インプラント埋入したインプラントのオステルメンター検査を行った.オステルメンターとは,磁気パルスによってISQ値(インプラント安定指数:インプラントと骨との結合の強さの度合いを示す数値)を非侵襲的に測定するデジタル検査機器だ.

埋入したインプラントはストローマンBLT,SLActiveインプラント,Roxolid.

 

 

 

 

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4方向から照射した検査結果は,左上2が68,68,68,68,左上3が73,74,73,74だった.GBRを同時併用しての埋入後60日であることを考慮すると,この数値は極めて良い(70を超えたら,安心して荷重かけてよし).左写真は60日前の抜歯窩にインプラントを埋めた際の撮影である.インプラント体は抜歯窩に突き出た状態で,わずかに先端部のみが既存骨にねじこまれている状態だった.この状態から,たった2カ月で70以上の数値を出せるとは,SLActive Roxolidの表面性状は凄い!

 

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インプラント埋入後,60日目の治癒状態.インプラント周囲粘膜の炎症はなく,治癒良好だ.

 

利益相反(COI)

 ここ2,3年前から,学会発表や論文投稿の際,”利益相反(COI)”の申告が義務づけられてきている.”利益相反(Conflict of Interest:COI)”とは,ある行為が,一方には利益になり,同時に他方には不利益になる状態のことである.たとえば,大学に所属している研究者がある試料の科学的な試験結果を社会に報告する際,その研究結果がネガティブなものであれば,それを科学的に,公正な立場で社会に報告することは大学と社会にとって利益である.しかし,その研究に直接かかわった個人としての研究者,および対象となった試料を提供している企業にとっては不利益である.なぜなら,その研究者が研究費なり,寄付金なりをその企業からもらい受けていたり,何らかの契約関係にある場合,企業に対して不利益をもたらすことは自己の利権を損ねるからである.このような場合,研究者は良心と利権との板挟みとなり,結果,データに手加減を加えたりするかもしれない.当然,公表される調査結果は信憑性が低下するだろう.

 だから,科学的研究を社会に報告する際は,研究発表者が企業などと”利益相反”状態にあるか,ないかは,その報告の信憑性にかかわる重大事項なのである.大学が公正な立場で科学的事実を社会に発表することは社会貢献であるが,産学連携の必要性が謳われている昨今,現場では,利益相反状態の下で仕事をしていかねばならない研究者は多いだろう.今後,ますます,研究者の良識が問われることになる.

 

顎関節症の原因

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開口障害,関節痛,関節雑音を三徴とする顎関節症は,その罹患率が高いわりに,原因や治療法について,あまり一般には知られていないように思う.

以前は咬み合わせの不正が主な原因と考えられていたが,最近では咬み合わせの不正はメジャーな原因ではなく,TCHやブラキシズム(咬み締めや歯ぎしり),そしてストレスがメジャーな原因と考えられてきている.

今日は顎関節症について,本HP内の”Dentist”に詳しく書いたので,よかったら読んで行って欲しい.

www.nakayamadental.com/contents/2016/10/post-21.php

 

 

 

 

親知らずは抜歯した方がよい理由

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 親知らずはまっすぐに生えずに,手前の歯にもたれかかるように斜めになって,長期間,埋もれたまま経過することが多い.このような場合,親知らずの周りには深い歯周ポケットが形成されるのが常なので,手前の第二大臼歯に致命的なダメージを加えることになる.よくあるのは根面齲蝕と慢性辺縁性歯周炎だ.これらが重症になると,親知らずと同時に抜歯しなくてはならない.咬合機能からみれば,これは手痛い損失なのだ.

 右デンタルX線写真は,親知らずの典型的弊害だ.ひどく根面が侵されている.こうなると,親知らずといっしょに第2大臼歯も抜歯することになる.早めに親知らずは抜歯しておいた方が良いという根拠だ.

 

 

下顎側方運動時の臼歯離開の重要性

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このデンタルX線は右下顎大臼歯部の辺縁歯槽骨の吸収を示している.当然,歯周ポケットは深くなっている.

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同側の対合歯部もやはり辺縁歯槽骨の吸収を認める.口腔の特定の部位にのみ,このような著しい骨吸収を伴う歯周ポケットの深化を認める場合,咬合性外傷を疑わねばならない.つまり,絶え間なく,上下の歯同士がぶつかり合っている状況だ.

 

 

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上記のレントゲン写真の実際の口腔を見てみると,強い咬みこみが見られる.つまり,鋭い咬頭(咬む面のとがった部分)と窩(咬む面のくぼんだ部分)をもつ上下の歯列が,咬頭と窩がしっかりはまり込んだ状態で接触している.この写真は,下顎を少し右方にスライドさせてもらった時に撮影しているが,上下の大臼歯は接触したままだ.これでは,下顎を側方に動かそうとしたら,上下の大臼歯にそれぞれ横向きの力がかかってしまう.つまり,絶え間なく揺さぶられている.これが骨吸収を加速させる原因だ.

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よいといわれている咬み合わせは,上の写真のようなものだ.これは別の患者さんであるが,下顎を右方にスライドさせたとき,犬歯のみがコンタクトして,それ以降の臼歯がすいている.この現象は,側方運動時の臼歯離開(ディスクルージョン)と呼ばれ,歯を健全に長期間保つために必要な重要な咬合様式と考えられている.歯周病で歯を支える組織が減少し,支持能力が弱っている場合,なるべく側方運動時には臼歯離開させた方がよいのである.

 

TCH(上下歯列接触癖)

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 TCH(Tooth Contacting Habit 上下歯列接触癖)は臨床でよく遭遇する.TCHとは,食事以外の時に上下の歯列を接触させる癖のことで,知覚過敏や歯の慢性咬合痛,歯冠破折,歯周病の悪化,顎関節症などの原因になるといわれている.だから,口腔の健康のためには良くない習慣だ.改善することが望ましい.

 その存在がなぜ,一瞥しただけでわかるかというと,頬粘膜が咬合面に沿って,口腔の入り口側から喉側に向かって,筋状に白く隆起しているからである.

 この習慣のマイナス効果を正確に患者に伝えられるのは歯科医師しかいないので,これを見つけるたびに,この習慣をやめるように指導している.具体的には,その為害性を患者さん自身に認識していただき,自らやめるように努力することを促すのである.

 

オンラインストア

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 便利な世の中になったものだ.インプラント治療に必要なパーツの種類はものすごく数が多いので,その購入の際,以前なら正確を期すために,そのリストをPCで作製し,それをインプラントメーカーの配送部にFAXしていたのだが,最近では,これらはオンラインストアで入手できるようになった.

 今回,当院では使用していないノーベルバイオケア社のインプラントの上部構造をやり替える必要があるケースに遭遇し,パーツの購入をオンラインストアで試みた.ノーベルバイオケア社のオンラインストアは,その商品のラインナップがメチャメチャ豊富で,なかなか目的のパーツにたどり着けない.なにせ,インプラントの種類だけでも列記すると,

ブローネマルクシステム マークⅢ,ブローネマルクシステム マークⅢグルービー,ブローネマルクシステム マークⅢショーティー,ブローネマルクシステム マークⅣ,ノーベルスピーディー・グルービー,ノーベルスピーディー・ショーティー,ノーベルアクティブ,ノーベルテーパードCC,ノーベルテーパードCCPMC, リプレイスセレクト テーパード,ノーベルセレクトテーパード,ノーベルリプレイス・テーパード,ノーベルリプレイスPSインプラント,リプレイスセレクト・ストレート/リプレイスセレクトTC,ノーベルリプレイス・ストレート,ノーベルスピーディーリプレイス,などなど,笑ってしまうほどややこしいのだ(ここまで,HPを見ながら必死で書き写した).

 

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 しかしながら,コンピューターの威力は絶大で,正確にクリックさえすれば,間違いなくその商品が届く.クリック操作で決済できるシステムは,基本的にはよい.昔のように,係員が勘違いしてはいけないからと,こちらが正確にリストを創る手間が省けるからだ.そして,最近の物流業界はものすごく進化していて,発注したら翌日にはもう商品が届いたりしているのは非常に良い.

 こういったIT技術の導入は時代の流れであって,もはや逆らえず,その良い面を評価し,積極的に活用して行きたいと思っている.それにしても,ノーベルバイオケア社の商品って品数がメチャクチャ多いな.

 

抜歯後の止血処置

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右のデンタルX線写真の上顎5番の根尖には大きな透過像があり,抜歯の適応です.このような歯を抜歯した場合,通常,ガーゼを30分程度咬んでいただいて,止血を図ります.しかし,ガーゼを咬まなくとも,抜歯後,即座に止血させる方法があります.それは,抜歯窩に何らかの物質を詰めることです.通常,市販の吸収性コラーゲンを使用しますが,あえて市販のものを使わなくとも,止血させる方法は他にもあります.自己血から取り出して遠心分離で創るフィブリンです.

 

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通常は,抜歯窩は何もせず,ガーゼを咬んでいただき血餅ができるのを待ちます.この,血餅の中には,治癒が正常に起こるのに必要なすべての成分が含まれているので,血餅を確実に抜歯窩に満たしておけば,治癒を迎える準備としては一応,OKです.

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ところで,この抜歯窩に自己血から生成されるフィブリングルを詰めておけば,さらに止血と治癒が確実になります.フィブリンの中には,抜歯窩の内部に自然に湧き出てくる血液の塊に比較して,治癒に必要な物質が,何倍も濃い濃度で充満しているからです.

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この方法だと,即座に止血ができるので,即時にテンポラリーブリッジの製作も可能です.


 

  

 

 

 

 

インプラント周囲炎について

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インプラント周囲炎は,現在のインプラント治療が直面する最大の問題です.歯周病が原因で歯を失った人に対して行ったインプラントの方が,歯周病以外の原因でインプラント治療になった場合よりも,その発症頻度がはるかに高いことが知られています.その直接原因は,天然歯同様,歯周病菌がインプラント周囲歯肉に感染することですが,間接原因としては,喫煙習慣や糖尿病が代表的なものです.それ以外の局所的原因としては,最低2ミリの角化歯肉幅の欠落や,GBR(骨誘導再生法)が完全に成功していないこと,などがあげられます.

 

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25622536

 

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いずれにしても,歯周病で歯を失った後にインプラント治療を行う場合は,それに先だって,しっかりした歯周治療を先行して行うべきであることがコンセンサスとして確立しています.

 

グレーシーキュレットのハンドルの記号,およびルートプレーニングについて.

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 普段は衛生士さんに任せて自分ではしないけれど,土曜の午前中に限って,自分でルートプレーニングをしている.その時,グレーシーキュレットを所定の場所から自分で取り出してバットの上に並べるのだけど,柄の部分の中央についている記号の意味が分からなくて腹立たしい.つまり,「SG1/27」,[SG3/47],[SRP7/8R7]などという記号だ.通常,日本では,グレーシーは1-2,3-4は前歯用,5-6,7-8は小臼歯用,9-10は大臼歯用,11-12は臼歯近心用,13-14は臼歯遠心用,といった具合にシンプルな数字で表現されることになっているので,当院のハンドルの記号はわかりにくい.ネットで調べたら,ヒューフレディー社の製品番号だった.アメリカの学会場で購入したので,こんなよくわからない記号がつていたのだ.記号はあてにできず,刃の部分の形状で選択しなければならないわけだ.まあ,よいのだが.

 ところで,ルートプレーニングはやっていると楽しい.器具をデリケートに使い,歯の表面は出来るだけ削らずに,歯石やプラークだけを選択的に剥ぎ取らなければならないのだが,これが結構むつかしいのだ.その分,繊細な技術が必要ゆえ,面白い.上手く出来れば口の中がすっきりさわやかになり,口腔細菌のレベルも歴然と減少させられるのだから.しっかりした仕事が出来れば,それなりの対価をいただく価値は十分にあるサービスと思う.

 

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