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院長コラム

年頭所感 ~危機が未来をひらく~

百年に一度といわれる金融危機と世界同時不況に日本も飲み込まれている。ついこないだまで世界の優良企業と思われていたトヨタは戦後初の連結赤字に転落し、派遣社員は職と住処を失い、大企業でさえも正社員の削減を検討しているとの暗いニュースが年末の巷に流れた。この寒空に職と住処を失った派遣の人々の気持ちはいかばかりであろうと同情するが、人ごとではない。歯科界とて不況の影響は免れず、うかうかしていると歯科医院経営も苦境に立たされそうである。
 
そういうわけで、2009年こそは真剣に歯科医院経営に取り組まねばならぬとの志を神前に誓うため、元旦に伊勢神宮を参拝した。清らかな森の参道を歩くうちに心が洗われ、清々しい気分で参拝させて頂いた。しかし、苦しいときの神頼みではいけない。S.スマイルズが彼の著書「自助論」で主張するように、「天は自ら助くる物を助く」という格言はやはり真実であろうと思う。ならば、如何様に自らを助けるのか。先ずは理念が大事でしょう。では、どのような理念を抱くことが、この困難な時代に、自らの力で、地に足をつけた医業を営むことに連なるのでしょうか。それは、患者利益を中心に考え、高品質の歯科医療サービスを提供することに他ならないと思う。そもそも、自分が歯科医業を営むのは、社会に貢献するためであるし、提供出来るサービスが高品質でなければ、真に社会の人々に喜んで頂けないと信じている。どのような人にとっても健康はかけがえのないものである。他でもない、この私の口腔機能が損なわれようとする時、あきらめかけていたそれが再び取り戻せるのならばと、命の次に大切なお金を払ってくださるのでしょう。そのような切なる願いを抱かれる人々の口腔機能の再建はそれなりの技量を要するので、そのために我々歯科医師は技術の研鑽に励んでいるのだ。だから、歯科医師である私の存在意義は、口腔の健康を取り戻したいという、切なる患者の願いをかなえることだと心得ている。だから、当院の理念は、患者の利益を中心に、どのような困難なケースにも対応可能な高品質の歯科サービスを提供すること。そして次に考えるべきは具体的戦略です。どのようにこの理念を歯科医業に反映させ、繁栄につなげるか。
 
そのような思いを抱きながら自宅に帰り、先ず元旦の日本経済新聞を読んだ。第一面は「危機が開く未来へ」と題して、危機こそ発明や発見の源泉、との前向きの論調とともに、トヨタが石油に変わる太陽電池車の開発に全力で取り込んでいることを報道していた。また、「世界この先  サバイバビリティ」と題するコラムでは、京大総長の松本 紘氏の、超ポジティブな意見が紹介されており、眼を見張った。氏は地球だけの閉じた経済圏では、安定的な成長は難しくなるという。地球温暖化、環境、食料、資源といった問題が待ち構える。例えば食料は食べる量を減らせば百億人くらいまでなら地球上で供給出来るが、二百億人が限界。資源も、今の採掘技術のままでは、金が三十年、銀が二十年、銅が四十年で枯渇し、工業界の需要の伸びに追いつかないという。地球の気温も確実に上昇し、持続可能性(サスティナビリティ)を目指すといっても不可能で、成立しないのは明らか。地球だけの閉じた経済圏では少なくとも百年以内に生存が厳しくなる。個人、会社、地域、国、世界のレベルで生存大競争が始まっているという。ここまでならお先真っ暗であるが、ここからが凄い。日本はどのように存在感を発揮すればよいか、という記者の質問にたいして、「高い技術と勤勉さは我々の資産だ。世界に打ち勝てるのは環境やエネルギーの技術だろう。
 
将来は宇宙空間で、エネルギー、資源の利用を争い合う時代も到来する。地球から宇宙に飛び出し、大きな構造物を造れる技術を持つ国が優位に立つだろう。」「ロボット技術や半導体技術、太陽電池技術を生かせば、日本が宇宙に発電所をつくることも可能だ。農場や工場も出来るだろう。どこを変えれば日本の産業が活気づくのかを考える必要がある。太陽系を利用する技術をつかんだ国が確実に繁栄する。」と、答えている。
 
 希有壮大であり、聞くだけで清々しい気持ちになる。これは多いに参考になる超ポジティブな意見だ。氏の論旨は、限られた地球がテリトリーではやがて資源が枯渇する。経済発展の鍵は、あらたなる資源を宇宙空間で産生することであり、そのためのハイテクノロジーの供給力が経済発展の起爆剤になる、というものであろう。この発想を歯科界に応用すれば、限られたテリトリーの外に眼を向ければ活路が開けることを暗示している。歯科でいえば、咀嚼力や装着感の観点から、義歯よりもインプラントは圧倒的に優位にあることは確実であるし、当面はインプラント治療の隆盛が歯科界の閉塞感を打破するだろう。そしてその先には、再生医療の時代が訪れることは想像に難くない。インプラントのような金属を素材とする人工臓器ではなく、自己の幹細胞から作りだされた細胞が、失われた歯周組織や歯を再構築する医療。そして、このような外科処置が全く無痛的に行われるための安全快適な麻酔技術の進歩。このような新テクノロジーが歯科界を活性化させるだろう。また、咀嚼が高次の中枢機能の維持増進に大きく貢献している事実を一般社会に啓蒙し、歯科的健康の価値観を高めることが歯科産業全体の活性化に直結するだろう。歯周治療が糖尿病や肥満に好影響を及ぼすことを啓蒙することはもちろん価値があるが、それ以外にも人間として生き生きと生活するためのなくてはならない高次中枢機能の健康、それを支える咀嚼、その構成要素としての歯と歯周組織と位置づければ、口腔の健康を守ることの価値はさらに高まるだろう。人間らしい質の高い生活の根底を支え、維持する臓器としての歯と歯周組織、および口腔の機能に関する学問的探求の進歩を注意深く見守るべきだ。
 
 要するに知が富を生むのである。新しいテクノロジーが時代を切り開くのである。そのように信じて新知識の導入と技術の研鑽にいそしんでおれば、一朝一夕に成果は上がらないかもしれないが、やがて大発展が訪れると信じる。さあ、明日からも健康に留意して切磋琢磨、切磋琢磨!
 

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