歯周炎においては、細菌は歯周ポケット内部の根面に付着するだけでなく、ポケットを構成する内縁上皮の表面から内部の結合組織に向かって侵入することは以前書いた。この細菌が侵入したゾーンには、好中球と単球(マクロファージ)も浸潤してくる。つまり、そこはバトルフィールドだ。このバトルフィールドを病理学的に表現すれば炎症性細胞浸潤だ。この好中球や単球(マクロファージ)は、細菌を捕獲し、貪食する為に、血管から抜け出してやって来る。この場合、好中球や単球(マクロファージ)は、非特異的に細菌を攻撃している。無差別だ。
ところで侵入しようとする細菌と、それを阻止しようとする好中球や単球の防衛ラインが歯肉表面近くにとどまっている場合、これを歯肉炎という。骨からまだ遠いゾーンでのバトルなので、まだ骨吸収は起こらない。ところが、この防衛ラインが深部に後退すると、前線が骨に近づいてくる。こうなると炎症が起っているゾーンに必ず顔を出す免疫担当細胞が、破骨細胞系の活性化のスイッチを入れるサイトカインを放出し始めるので、破骨細胞が活性化され、骨吸収が起る。これが歯周炎だ。骨吸収までいってしまったら歯周炎なのだ。だから、バトルフィールドを後退させず、それを歯肉表面近くで死守できれば、より重度の歯周炎への進行をブロックできる。
参考文献(1):Graves DT,Oates T,Garlet GP. Review of osteoimmunology and the host in endodontic and periodontal lesions. J Oral Microbiol 2011,3:5304-DOI:10.3402/jom.v3iO.5304.