根管充填を終えて、その上部に全部被覆冠を乗せて治療を完結させたとしよう。その歯が、将来、歯根破折を起こす確率と上部に乗せる全部被覆冠の質(例えばジルコニアフルミリング冠、メタル冠、ポーセレンメタルボンド冠、ポーセレンジルコニアボンド冠、レジン前装冠、セラミックCAD/CAM冠など)とは関係があるのだろうか。そういう疑問を持っていたところ、ヒントになる論文を見付けた(1)。
その論文の報告によると、根管充填を終了した歯が歯根破折を起こす確率と、上部に乗せる全部被覆の質とは相関関係がない。むしろ、歯根破折と関係する要因は、支台築造をファイバーポストとレジンのコンビネーションにするか、ファイバーポストを使用せずレジン単独にするか、の違いの方が大きく関係する。ファイバーポストを使用した方が破折しにくい。
この結論から類推すると、2008年の時点では調査対象にジルコニアフルミリングクラウンはまだ入っていなかったが、現在同様の調査をジルコニアを含めて行えばやはり同様の結果になるのではないかと思う。つまり、根管治療を終えた歯にジルコニアフルミリングクラウンを乗せようと、e-max cad/cam冠を乗せようと、ゴールド冠を乗せようと、金銀パラジウム合金を乗せようと、咬合調整を完璧に行っておけば、上部に乗せるフルクラウンのマテリアルの差は歯根破折のリスクにあまり関係しないのではないか。ただし、この疫学調査は各施設間で咬合調整能力に差がないという前提で行われる必要があるが。
参考文献:
(1)J Endod. 2008 Jul;34(7):842-6.
Salameh Z1, Sorrentino R, Ounsi HF, Sadig W, Atiyeh F, Ferrari M.