今日のテーマは歯列不正と歯周病の話だ。歯列不正は歯周病の増悪因子になり得る。歯列不正はプラークリテンションファクターと呼ばれるいくつかのプラークを歯列に停滞させる要因の一つだ。ついでに言及しておくと、その他のプラークリテンションファクターとして、歯石、歯肉歯槽粘膜部の形態異常、不適合修復・補綴物、歯の形態異常、食片圧入、口呼吸、口腔前庭の異常、歯頚部う蝕、歯周ポケット、などがあげられる。歯列不正の歯は、通常のブラッシングでは隣接面のプラークが取り残されるので、確かに歯周病が進行しやすい。これに対する最も根源的な対処法は歯列矯正だ。歯列を整えることでブラッシングの効果を高め、プラークの停滞を改善することは大いに有意義と考えられるので、最近では、歯周治療の一環としての矯正治療が、結構、行われるようになっている。
逆に歯周病が歯列不正を引き起こすこともある。例えば、「フレアーアウト」と呼ばれる歯周病が原因で起こる歯列不正がある。「フレアーアウト」とは歯が動揺をきたした結果、咬合力により前方に傾斜移動して「出っ歯」になり、かつ上顎の各前歯がばらけてすいてくる状態をいう。これは歯を支えてきた歯槽骨が歯周病で減少し、歯が移動した結果生じる。この状態を矯正治療で元の歯列に戻すことは可能だ。
歯列不正は歯周病の原因にもなるし、歯周病の結果にもなる、ということだ。ところで、歯周病の結果、移動してしまった歯を元の状態に戻すには矯正治療が必要だが、通常の矯正治療に比べて移動させやすいのではないかと考える。逆に言えば、力をかけ過ぎれば抜け落ちてしまうのかもしれないが、弱い力をかける分にはたぶん大丈夫な気がする。やったことがないが、今後の自分の臨床のレパートリーに加えたい気持ちは大いにある。これから、矯正治療、特に歯周病にフォーカスした矯正治療を勉強していこう。