自分はインプラントの傾斜埋入は好まない。自然の歯を代償するべく登場するからには、自然の歯と同じく、”真っ直ぐ”に生えるのが最も生理的状態であろうと信じるからだ。不自然なものを体内に入れてはいけない。これは自分の感性に基づく判断だ。
傾斜埋入は、時に臨床的にインプラントの適応を容易にする。垂直埋入では重要な神経、血管や上顎洞などに到達する場合、傾斜させることでインプラントが顎骨内に無難に収まってくれるからだ。だから、一部の臨床家は傾斜埋入を戦略的なインプラント治療として、積極的に取り入れてきた経緯がある。しかし、自分はそれをしなかった。一番の理由は美しくないからだ。傾斜埋入されたインプラントのレントゲン写真をみると不自然で、醜悪と思う。だから、取り入れなかった。この感性は、自然界が正しいものに導くために用意したナビのようなものだと思っていて、生理的に受け入れられるものに従ってやっていれば大間違いはないだろうと思ってきた。
インプラントの傾斜埋入に対して理詰めで批判的な意見を言うと、傾斜の度合いに応じてインプラント内部のストレスが増加することがわかっている(1)。人間の感性に引っかかるものには何かしらの欠点があるということだろう。
参考文献: