前述の水俣病の症状は水銀中毒の症状です。水銀中毒は、有機水銀による中毒と、無機水銀による中毒の二種類に分かれます。水俣病は有機水銀であるメチル水銀の中毒です。メチル水銀は腸管から吸収され、肝臓、腎臓、及び脳に蓄積されます。
一方、無機水銀の中毒の例というと、歯科のアマルガムがあげられます。アマルガムは合金ですが、水銀は蒸気圧が高いため、室温でも容易に蒸気になります。アマルガムから気化した水銀蒸気が肺から吸収され脳やその他の臓器に蓄積します。アマルガム充填者血液中水銀濃度はアマルガム充填本数やアマルガム表面積と高い相関関係が認められることが報告されています。またアマルガム充填者の死亡後の剖検例では、アマルガム充填者の水銀濃度がアマルガムを充填していない対照者に比べて、後頭皮質で約2倍、腎臓で約10倍高いことが報告されています。無機水銀は体内で代謝され、メチル水銀に代わります。
このような歯科用アマルガムから無機水銀が体内に入った場合、中毒症状としては、最初に食欲不振、体重減少などの消化器症状が現れ、続いて振戦、エレチスムとよばれる神経症状(些細なことで怒ったり、意味のないことに悲観したり、失望したり、人と会うことを極端に嫌がったりなどの性格が極端に更新した状態)、口内炎(水銀口内炎と呼ばれる)が三大症状と言われています。
(次回に続く)