ジルコニアは、現在、セラミック修復において最も多く使用されている材料です。その隆盛の原動力の一つに、ジルコニアの持つ丈夫さがあげられます。破折強度900~1300MPaというのは、歯科材料の中では最強に位置します。他のセラミックや金属以上の強度を持っているのです(とはいえ絶対に割れないわけではありません。ジルコニアは高い曲げ強度を持っていますが、それでも金属ほどたわまないので、曲げ力を加えると金属が耐える限界点の前で“パリン”と割れます)。
それほど上部なジルコニアの長期予後はどうなんだろう?と気になるところです。それに関して、ジルコニアの10年後の生存率が85%という数字が、最近になって報告されました。その内容を見ると、ジルコニアフレームそのものの破折はなく、前装陶材のチップ(かけること)が28%であったとのことです。
ジルコニアの10年生存率が85%という数字はまずまずの数値です。きわめて優れているわけでもなく、また劣っている数字でもありません。1985年から2006年までに海外から報告された補綴物の生存率に関する16論文のレビューでは、クラウンブリッジは、装着後10年以上経過すると非生存率が1割を超え始め、15年で約1/3、20年で約1/2まで生存率が落ちる、つまり存在しなくなる、と報告されています。それを考えれば、10年たって残っているジルコニア冠が85%という数字は、ほぼ従来の補綴物と変わらないといえます。優れた強靭性を備えて鳴り物入りで登場したジルコニアがなぜ凡庸な成績なのか?という疑問がわきますね。
(次回に続く)