以前、歯科用セラミックの強度を比較する数値を紹介しましたが、その際に何も言及しなかった「破折強度」の捉え方を今日は紹介します。破折強度とは、ある材料に力を加えたとき、例えば「加圧する」、あるいは「引っ張る」といった力をゼロから徐々に加えていった場合にどこかでその材料は破断します。今ある状態を保てる限界を超えてその材料が破断を起こすその瞬間に加わった力をもって「破折強度」とします。
その検査の方法とは、例えば板状の材料を、両端を支点で支えられた状態で台の上に起き、中央部に力を加える金属製の棒のようなものを押し当て徐々に力を加えるのです。ちょうど、空手家が両端をブロックで支えられた瓦の中央を手刀で割るような案配です。それを一気に力を加えるのではなく、のせる台がブロックでもなく、棒にコントロールされた力を徐々に加えられるように作られた精密測定器の台の上で試験するのです。資料の形は板状のこともあれば、調べたい歯冠修復物の形状に作ることもあります。
加える力は圧力で表現され、その単位はMPa(メガパスカル)という国際単位が用いられます。1Paとは1平方面積(m2)あたり1ニュートン(N)の力が作用した状態の圧力となります。
すなわち、1Pa=1N/m2 となります。ちょっとイメージしにくいですが、1Paは1 m2の板の上に「リンゴ(約100g)」が1個置かれているくらいのときの板に加わる圧を示しています。またM(メガ)は「10の6乗」を示すもので、1MPaは1Paの100万倍の圧力です。
ジルコニアの破折強度が900~1300MPa程度ですが、これがどれほど強靱なレベルであるかというと、ハイヒールを履いた体重60Kgの人物による圧力が12MPaですから、人間がどんなに踏んづけてもジルコニア冠を割ることは不可能でしょう。木の板の上にジルコニア冠をのせてハンマーでぶっ叩いたとしても、ジルコニア冠は割れることなく、板の中にめりこむだけといえばジルコニア冠の強靱さがイメージできるでしょう。
(次回に続く)