後期高齢者(75歳)の著しい増加が予測される2025年問題に対して、歯科界も動き出そうとしている。歯科医師会の上層部は国の政策に従って、歯科界も行政と同じ方向に舵を切ろうとしている。しかし、自分を含めて末端の歯科医師会員は、具体的にどう行動を起こしていいのか戸惑っている状態といえる。今日は2025年問題に対する歯科界の対応について考えたい。
先ず、高齢者の増加は医療並びに介護コストなどの社会保障費の上昇をもたらすことは必定だ。では国はこの高齢者の医療費の抑制のためにどういう方向に医療を向かわせようとしているかというと、それは「地域包括ケアシステム」の構築だ。「包括(ほうかつ)ケア」ってなんや?「包括」とは多くのものをひっくるめてまるめることだから、包括ケアとは一人の患者さんに多くの職種のものがたずさわってよい状態に導くケアのことだ。具体的には、医療・介護・福祉に関連する人々による医療連携だ。医療連携してよいことは、居宅、通所のかたちで医療が受けられることだろう。患者の方が適切なそれぞれの診療所に通い、通えない場合は診療所側が患者宅に出向く。入院コストがかからないので、医療コストが節減できる。要するに、地域包括ケアとは、高齢者が人生の最期まで住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けるために必要な支援体制のことだ。
さて、歯科の地域包括ケアへの貢献として考えられるのが、在宅を支援する訪問歯科診療だ。訪問して歯科医療をするのだから、診療所で展開している歯科治療のレベルと同等のものを提供することは難しい。院外での医療活動は災害地のテントの中の医療のような、いわば野戦病院型の医療となるだろう。”MASH”だ(若い頃、こんなタイトルの米軍の野戦病院が舞台の映画を見た。はみ出し外科医が主人公で面白い映画だ。)。開業歯科医は、その活動の一部を訪問診療にシフトしていくことになるだろう。
それはよいことだ。先端的な高度な医療も重要だが、患者の家庭を訪問して行う歯科医療もやはり重要だろう。したがって、自分も野戦病院型の歯科診療に備えていかなくては、と思っているところだ。