肥満やメタボリックシンドロームを有する人は糖尿病になりやすいことはよく知られている。と、同時に歯周病も悪化させ易いことが解っている(1)。その理由は、昨日も言及したとおり、炎症性サイトカインは肥満内臓脂肪組織において発現が上昇しているからだ。この炎症性サイトカインがインスリン抵抗性に関与しているのだが、歯周炎の進行にも関与している。IL-1,IL-6,TNF-αなどの炎症性サイトカインは、歯周組織でRANKL/OPGのバランスを歯槽骨吸収の方向に傾けていく。だから、肥満脂肪組織から放出される炎症性サイトカインは、歯周病を悪化させるのだ。
ところで、以前は脂肪組織における炎症性サイトカインを産生する細胞は大型化した脂肪細胞と思われていた(その大型脂肪細胞から分泌されるサイトカインはアディポカインと呼ばれる)。ところが、最近になって、脂肪組織における炎症性サイトカインは、主に脂肪組織に浸潤するマクロファージが産生していることが明らかとなった。さらに、そのマクロファージは二種類に分かれ、一方はM1マクロファージ、もう一方はM2マクロファージと呼ばれる。M1マクロファージはTNF-αやIL-6などの炎症性サイトカインの放出量が多く、M2マクロファージは抗炎症性サイトカインであるIL-10の放出量が多いとのこと。実験では、肥満でないマウスの内臓脂肪にはM2マクロファージが多く、高脂肪食を与えて肥満化させたマウス内臓脂肪ではM1マクロファージが優位になったという報告がある。どうやら、インスリン抵抗性という観点からマクロファージにも善玉と悪玉が存在し、M2マクロファージは善玉ということになるのかもしれない。
糖尿病の項ではさらっと流したが、実は脂肪組織=炎症組織である。肥満の内臓脂肪は大きな体積を占めるから、それが同時に炎症の場であるとすると、相当量のサイトカインが内臓脂肪から出ていることになる。多くの疾患は炎症との関連から見直されてきているから、肥満が多くの疾患の発症の有力なリスク因子になることは容易に想像出来る。
参考文献:
2 薄井 勲. 2型糖尿病のインスリン抵抗性における炎症の役割.