歯周病の存在がなぜ糖尿病にマイナスも影響を及ぼすか、その分子レベルの一般的説明としては、現時点では以下のようになる。
歯周病が発生している局所では、炎症に引き続き免疫応答が生じる。この免疫応答に参加する免疫担当細胞からはTNF-α、IL-6などの炎症性サイトカインが多量に放出されてくる。この炎症性サイトカインは、インスリンがその標的細胞のレセプターに結合してシグナルを細胞内に伝達し、細胞外のグルコースを細胞内に取り込ませるためのシグナル伝達を阻害する。(炎症性サイトカインがインスリンシグナルを阻害する分子機構については、後日説明する。)つまりインスリンの標的細胞にインスリン抵抗性を生じさせるというわけだ。
以上が、キモの部分だ。
また、「歯周病からサイトカインが出てくる」といったって、歯茎の一部の病気に過ぎない歯周病からのサイトカインがどれくらい多臓器に影響力を及ぼす能力があるのか疑問に思う向きには、口腔内の歯周ポケット内面の表面積の総和は結構大きな面積であり、およそ手のひらサイズに相当することより、手のひら全体に潰瘍が存在したらそりゃ多臓器にも影響が及ぶでしょ、という論理で説明されている。
参考文献
1 築山鉄平.宮本貴成. 歯科医療のイノベーションを考える. the Quintessence. Vol.36 No.118-141.2017