今日のテーマは歯根破折だ。歯根破折といっても、歯の長軸に沿って破折線が入っている場合(垂直性歯根破折)や、長軸に直行する形で破折線が入っている場合(水平性歯根破折)や、斜めに破折線が入っている場合もあり、いろいろだ。そして破折の状況も、マイクロクラックと呼ばれる細い亀裂だけの場合もあれば、亀裂が進んで完全な破折にいたり破折片がバコバコと動いている状況が肉眼で確認できる場合もある。
さて、歯根破折をきたした歯の予後だが、結論から言えばケースバイケースだ。マイクロクラックは適切な処置で救済される場合もあれば、そのまま放置して破折が進行しホープレスとなる場合もある。
破折の入り方によっても予後が変わる。時々、デンタルX線で完全に水平な歯根破折が根の中央あたりに見られるのに、臨床症状がまったくない場合がある。こういう場合はそのままの状態を維持できる可能性がある。破折部が口腔と交通していないために感染からまぬがれ、破折部の歯髄組織や硬組織が自然治癒しているのだ。生活歯であれば、歯根が破折しても感染しなければ、骨折と同様に治癒することがある。また、口腔と交通している場合には破折部が感染し、痛みや腫れといった臨床症状を呈した場合はアウトだ。破折部位が口腔と隔絶されているか、交通しているかで、破折歯の命運がわかれる。
垂直性の歯根破折はホープレスだが、それは破折線が垂直性ゆえに口腔と交通することによって感染が成立するからだ。一旦、垂直的に歯根破折した歯に感染が成立したら、その感染は抜歯する以外に制御できない。垂直性の歯根破折はホープレスだ。