1960年に世界で初めてルビー・レーザーが登場して以来、様々な分野で光エネルギーの応用が試みられてきている。医科においても皮膚科、眼科、外科等でその応用が急速に進歩しているが、歯科においても20年以上前からレーザーが歯周治療に取り入れられている。最近、低出力レーザー(LLLT:Low-level laser therapy)や発光ダイオード(LED:light emitting diode )を光感受性薬剤に照射して活性酸素を発生させることで歯周病菌を殺菌する新たな抗菌的光線力学療法(antimicrobial photodynamic therapy)が登場し、注目されている。今日のテーマはその光線力学療法だ。
具体的には、トルイジンブルーやメチレンブルーの青色色素を光感受性薬剤として用い、これを直接、歯周ポケット、あるいはインプラント周囲ポケット内に注入する。そして、先の曲がった細いチューブの先端から低出力レーザーやLEDが照射されるように設計された装置の先端をポケットの入口に接近させて光線を発射することで殺菌効果が得られる。すなわち、光照射を受けて青色色素から活性酸素が発生し、これがポケット内の歯周病菌を殺すのだ。
本法は術式がシンプルで、従来の機械的清掃器具が到達させにくい微妙な間隙や汚染されたインプラント表面のデブライドメントに有効と思われる。個人的にはインプラント周囲炎のオペで活躍するのではないかと思っている。
こういった新しい治療が現在の歯周治療でどういったポジションを取っているかというと、その治療効果は非常に良好であるが、臨床報告が限られているために、従来的な歯周治療に対するオプションにとどまっている。今後、長期予後に関する無作為比較試験、メタアナリシスを経たのち、その有効性が科学的検証で確認され次第、スタンダードな治療となっていくだろう(1)。
参考文献
(1)Application of antimicrobial photodynamic therapy in periodontal and peri-implant diseases.