以前に、「咬み合わせが顎関節症の原因となる明確なエビデンスはない」と書いたが、咬み合わせと肩こりとの関係、となると話は別だ。こちらは大いに関係がある。自分の臨床においても、早期接触が見られたため咬合調整を行ったところ、それまで続いていた肩こりや首の痛み、頭痛が翌日にはうそのように消失し、施術した次の受診日に、”一体あれは何だったんでしょう”、と患者さんからおっしゃっていただいた経験を何度もしている。それくらい、咬み合わせの不調和がもたらす筋緊張は若干の咬合調整により、短時間で症状がとれる。
それはなぜかというと、咬み締めとは下顎を閉じる筋肉が収縮して上顎歯列と下顎の歯列が、咬む面の凸部と凹部がうまくはまり込む形で、多くの接触面積でもって上下の歯列が安定して接触する状態に他ならない。この時の下顎のポジションのことを咬頭嵌合位と呼ぶが、この咬頭嵌合位に向けて、筋肉が楽に収縮して、下顎閉口路の最終位置として、下顎がそっとそこにはまり込めば問題はない。この状態の下顎の位置は、下顎の筋肉が決定することから、筋肉位と呼ばれることもある。ところが、下顎が楽に筋肉位をとりながら、そこが咬頭嵌合位でない場合、最終的な歯の咬む面の接触に至る以前に、特定の歯が他の歯より一瞬早く接触することがある。この時、下顎はこの早期接触を避けるように、筋肉収縮が導くところの本来楽に収まる位置ではなく、少しずれた位置で咬頭嵌合位を持つことになる。筋肉の楽な収縮が導く位置でない位置に咬頭嵌合位がつくられる場合、下顎は余分な運動を強いられるので、筋肉も余分な収縮を強いられ緊張してしまう。顎を閉じる筋肉に起こるこの緊張が、肩こりを引き起こすのだ。
顎を閉じるときに働く筋肉に生じた過剰な緊張は、”筋膜連鎖”により周囲の筋肉に緊張が連鎖する。首や肩、背中へ緊張は伝わり、場合によっては、腰や下肢までその緊張は連鎖する。頸部の筋肉の緊張は、”関連痛”のメカニズムにより、頭痛として認識される。これが、咬み合わせの不調和で肩こりや、首のこり、頭痛が起るメカニズムだ。この辺のところは、本HP内のDentistに詳しくアップしておくので、また読んで行って欲しい。