いよいよ今日は今回の咬合療法コースの最終日です。
午前中は顎(口腔)機能障害の話がありました。
いわゆる顎関節症と呼ばれている疾患がある一方で、TMD(側頭下顎障害)、CMD(頭蓋下顎機能障害)、顎(口腔)機能障害、temporomandibular joint pain dysfunction syndrome,
顎関節内障、MPD症候群、咬合病など、顎関節症と類似の症状に対する別病名も多数存在し、ややこしい。
ややこしいですが、この領域の疾患の理解と対応が歯科医療の未来にとってとても重要だと思います。
なぜなら、この領域の疾患の患者さんの症状は、頭痛や、肩凝りに留まらず、耳鳴り、めまい、焦点が定まらないなどの視覚障害、聴力障害、うつ傾向、その他症状自体が明確でないいわゆる不定愁訴、など、医科領域の受診につながるようなものだからです。
この様な症状を訴える患者さんは、歯科よりもむしろ医科の方に受診しているのではないでしょうか。
顎口腔機能障害の原因は必ずしも咬み合わせだけではなく、多くの因子の複合によって病態が出来上がっていると考えられます。
しかし、咬み合わせが関与しているものも多くあり、少なくともその部分の医療は歯科が担当するべきです。
咬み合わせは医科ではコントロール出来ないからです。この点において、歯科と医科とが連携して国民の医療に当たる必要がある大きな根拠があります。
歯科には修復の技術を極めて来たデンティストリーの歴史があり、この部分は今の医科には全くありません。
逆に歯の修復に関する技術以外の知識、すなわちなぜ咬み合わせが狂うと頭痛や肩凝り、視力障害、うつなどの全身症状が発現するのかを説明できる理論基盤が今の歯科にはありません。
顎口腔機能障害においてみられる症状がなぜ起こるのかというメカニズムを説明できるのは、医科の側にある膨大な医学知識とその医学的思考様式を持ってはじめて可能でしょう。
その医学的思考様式に基づく歯科疾患へのアプローチをストマトロジーと筒井照子先生は呼んでいらっしゃいます。
今のところ、歯科と医科とが連携する意義が明確な領域は歯周病と糖尿病との関係において明らかですが、それ以外にも咬合を介して病態が発生する領域は医科と歯科とが連携して大きな成果を出せる余地があります。
この様な領域の疾患は、現在医科でも治癒させにくい不定愁訴として対応に苦慮し、抗うつ剤の処方等でお茶を濁していることが推測されます。
このような咬合を介して発症する全身症状に対して、医科歯科連携の強化は大いに効力を発揮するでしょう。
午後には、明石市で御開業の国賀就一郎先生の素晴らしいケースプレゼンテーションを見せて頂きました。
ME機器による診断に基づいた臨床生理咬合を付与する全顎治療の内容は、圧倒的な素晴らしさです。
生理的で、審美的な補綴治療を極めるとこの域に達するのかと思い、今後の精進を継続していくうえでよい励みになりました。また。
インプラントの咬合に関するレクチャーも、分かりやすく、よくまとまっており、大変勉強になりました。
咬合医療は奥が深そうです。
しかし、きちんとした成果が出せた時に国民にもたらすことのできる貢献の大きさを考えるとき、頑張ってこの医療の勉強を継続していこうと誓った最終日でした。