2日目の午前は、咀嚼運動の講義がありました。
筒井先生の経験では、ほぼすべての顎機能に異常がある症例は「全身の中の下顎位」と「歯列も含めた適切な咬合面形態」を回復させれば回復に向かう、とおっしゃいました。
「全身の中の下顎位」とは一体何なのでしょう?最適な下顎位を得るための優先順位はリラックスした筋肉位と安定した咬頭嵌合位が最上位に来ます。
よい咬合を与えると、結果として生体は良い機能をし、よりよい形態へリモデリングし、リラックスした下顎位を表現して来ます。咬み合わせをよくすると全身もよくなるという関係です。
しかし、この逆の関係もあります。
すなわち全身が悪い(全身が歪んでいる)と、咬み合わせに悪影響を及ぼすという関係です。
つまり、咬み合わせと全身の機能は相互に影響し合っているようなのです。「全身の中の下顎位」とは、講義を受けた範囲で自分なりに理解した意味は、「全身の機能とよく調和する下顎の位置」という意味でしょうか。
つまり、よい咬み合わせは全身の機能をよい方向に導き、同時に全身のよい機能は咬み合わせをよい方向に導く、といったように両者は相互に影響し合ってお互いが良好な状態を維持できている、そういった状況にある下顎の位置を「全身の中の下顎位」と表現しているのではないでしょうか。
下顎位の講義の次は咀嚼運動の講義です。
咀嚼の際の下顎の動きの実際を、歯科医を含めてほとんどの人が把握できていないようです。
咀嚼運動サイクルを詳細に記述すると、以下のごときものになります。
右側で咀嚼するとすると、
1. 食物が口腔に入ると、下顎は左側後下方(作業側と反対方向)に開口し、舌で食物を右側臼歯部の咬合面テーブルの上に乗せる。
2. 右側作業側が先に垂直成分が強い開口をし、左側非作業側が遅れて水平成分が強く開口する。
3. ターニングポイントで非作業側が追いついて、サイクルの中での位置が左右同じくらいになる。
4. 右側後下方より閉口する。右側下顎の頬側咬頭が上顎の頬側咬頭内斜面(A点)を目標にして、隆腺で後横よりすりきって咬頭嵌合位へ入っていく。頬側の食べ物は歯肉頬移行部へ落ちる。
5. 上の舌側咬頭内斜面と下の頬側咬頭内斜面との接触点(B点)で食べ物を圧断する。
6. 遅れて上の舌側咬頭外斜面と下の舌側咬頭内斜面が咬頭嵌合位に入って、両者の接触点(C点)で食塊を舌房へ切り落とす。
7. 左側(非作業側)が垂直成分を強くして咬頭嵌合位に入る。
一日の最後に、歯科技工士である増田長次郎氏による咀嚼運動から捉えた機能的咬合面形態をプロビジョナルに付与するデモがありました。