左上1は歯根破折のため、抜歯し、即時にインプラント植立する計画を立てました。
抜歯した左上1です。
メタルコアが装着されていた部分に力が集中して、歯根が破折しています。
歯槽骨を傷めないように丁寧に抜歯した直後の咬合面観です。
抜歯窩の唇側歯肉のカーブは先程まで存在していた歯根の外形に一致した凸上の膨らみが見られますが、このままにしておくと抜歯窩の治癒過程でこのふくらみは間もなく消失します。
同唇側面観です。
同様に唇側歯肉縁の貝殻辺縁状カーブも委縮により、若干、根尖側に移動するでしょう。
しかし、抜歯後、即時に骨補填材を窩洞に補填しておくと、その歯槽骨の高さや幅の委縮をある程度抑えられると考えられています。
抜歯窩に対して、即時にインプラントを植立するに際して、適切な方向と位置に埋入の記始点を設けるためのガイドを装着します。
径1.4ミリのラウンドバーで抜歯窩口蓋側壁に起始点を設けた後、上顎前歯の歯槽骨は軟らかいので、ドリリングの代わりにオーギュメーターで埋入窩洞の径を拡大していきます。
インプラント埋入窩洞が本来の歯根先端の位置より、やや口蓋側に設定されたのが確認できます。
続いて、その埋入窩洞に径3.5mm、長さ15mmのアストラテックインプラントを埋入しました。
インプラントの固定は側壁には期待できないので、本来の歯根長より5ミリ程長く埋め込むことにより、インプラント先端部付近の骨による初期固定を狙います。
抜歯窩に埋入されたインプラントの咬合面観です。
通常、将来の唇側歯槽骨の委縮を見越して、インプラント唇側表面から唇側歯槽骨まで、最低2ミリ以上が必要といわれていますが、今回はその距離は十分に確保されています。
インプラント周囲の骨とのギャップにはFDBA+AFGを補填しました。
また、唇側歯肉と歯槽骨面との隙間に、口蓋歯肉から採取した結合組織を移植しました。
最後にインプラントと骨補填材の上面にCGFメンブレンを置き、周囲歯肉と縫合しました。
アストラテックインプラント 径3.5、長さ 15mmが植立された直後のデンタルXP。
初期固定が充分でないため、残念ながら即時レストレーションは断念しました。
シェルを両隣在歯に固定することで、左上1のインプラント上部の歯冠形態を回復しました。