今日は、広島大学広仁会館で開催された日本臨床歯周病学会中国四国支部教育研修会に参加してきました。
岡山大学の高柴正悟教授の基調講演「次世代の歯周病治療を考えてみよう!」では、超高齢化社会の歯科治療について考えさせられました。現在、アンチエイジングを考えた治療や生活が流行しているが、起こりうる加齢をあるがままに受け入れるソフトランディング・エイジングの方がより重要である、そしてこの考え方に基づく次世代の歯周治療とは、歯の形態や機能の回復を主眼とした歯科医療から、口腔の機能回復を主眼とした歯科医療へとシフトされたものであろう、という趣旨の内容でした。
われわれ歯科医は、とかく理想的に美しくかつ機能的な歯列を追求することを至上課題としがちですが、加齢と共に移ろいゆく臓器として口腔を捉えた場合、終末期まで管理可能な歯科修復物を作製し、口腔機能を良好に保ちながら人生を全うできる歯科管理の発想が紹介されました。
その発想で考えると、上部構造が撤去できないセメント固定式インプラントよりも、最終的には総義歯に容易に移行できる上部構造が可徹式(ネジ留め式)のインプラントの方が、終末期までクオリティーの高い口腔を維持できてよいのではないかと私は考えました。
小野善弘先生の特別講演「長期症例から歯周治療を考察する」では、はっとする気付きがありました。
これまで何度も聴いて分かっていたつもりですが、長期的に歯周組織を良い状態に保つために必要なことは、単に歯周治療だけを行うのでなく、矯正治療や歯内療法、インプラント治療などを有効に組み合わせなければならない、という話を聞いて、なぜ歯周病治療にインプラントが必要かということが完全に理解できました。
歯周病を予防し易い口腔とは、清掃が容易で、咬み合わせが安定している口腔である、ということは頭で十分わかっていたつもりでした。
しかし、今日のお話を聴いて、歯周病で歯を失った場合、歯列の保全が何をおいても重要で、そのためには、歯の欠損が発生次第、直ちにインプラントでその歯を代替させる方が、義歯やブリッジでその失われた歯の機能を代替させるよりも、歯列の保全のためにはより合理的であると私は気づきました。
また、既存骨のみを利用して何が何でも低侵襲で行う治療がよいのではなく、歯肉、骨、咬合平面の連続性を獲得することが歯列の安定につながるので、必要であればGBRや骨切除を行い、段差のない連続的な骨レベルに支えられた歯列を構築することが、結局は長期安定性につながることがわかりました。
今日のお話を聞かせて頂いて、時には侵襲性が最少でなくとも必要な外科処置をすることの重要性とその根拠を悟りました。