上顎前歯部に6本の欠損があるケースです。-
一見、歯槽幅はある様に見えますが、術前のCT診断では、この部の幅は4.0~4.5ミリしかありません。
i-CAT社製のCTサージカルガイドを準備して、手術に臨みました。
歯槽の幅が狭く、CTサージカルガイドだけに完全に頼るのは危険なので、オープンフラップでアプローチし、CTサージカルガイドで誘導されるドリリングの起始点が適切であればそのまま続行し、そうでなければ術者の感覚に頼った従来法で適正な起始点に修正する方針としました。
予定通り、CTサージカルガイドを装着した状態で、径の細いドリルでドリリングを開始しました。
その結果、右上1、左上1、左上3は適正であったけれども、右上3のみはやや口蓋側よりに位置しており、口蓋側壁の裂開が起こったので、この部位だけ術者主導で起始点を1.5ミリ唇側にずらすとともに、進入角度をやや口蓋側に傾斜させてあらためてドリリングしました。
次に、少しずつオーギュメーターで埋入窩を拡大する操作を行いましたが、この時、左上1の唇側の骨壁が破折し、裂開が生じました。
オッセオスピード 径3.5 長さ11ミリを、4か所に埋入しました。
裂開をきたした左上1は、インプラントの唇側のスレッドが露出しています。
左上1だけでなく、すべてのインプラントの唇側骨面、ならびに歯槽頂付近にFDBAを補填して骨壁の厚みを増加させました。
このうえに吸収性コラーゲンを圧接して補填材を補強し、さらに裂開をきたした左上1には吸収性コラーゲン膜をヒーリングアバットメントの上から覆いかぶせました。
粘膜骨膜弁を復位し、高密度PTFE糸でしっかりと創縁が接近するように水平マットレス縫合変法を加え、さらにモノフィラメントナイロン糸でその間を緊密に縫合しました。
最後に、あらかじめ、術後の創の保護、ならびに審美性の確保の目的で準備していた特殊な形態の仮部分床義歯を装着しました。
この義歯は創部を圧迫しないように前歯部の内面を大きくくり抜き、かつ人工歯が審美性を確保できるように配慮されています。
術後のデンタルX線写真です。
良好にインプラントが植立されています。