デンタルラボから両側下顎臼歯部のインプラントの上部に装着するポーセレンメタルボンド冠が完成して納入されて来ました。
それを顎骨内に埋入されているインプラント上に接続されたアバットメントに乗せることで、インプラントにしっかりと上部冠が固定されます。
今回は、上部冠とアバットメントの固定はセメント固定方式にしました。
臼歯部の場合、長期に安定する予後を期待するためには歯間乳頭の完璧な再現はあまり重要でなく、歯間空隙に清掃器具(歯間ブラシやデンタルフロス)が、楽に、確実に挿入出来ることが、健康そうに見える見かけだけの歯間乳頭を復元することよりもより大切だと考えています。
インプラントとインプラントとの間、あるいはインプラントと隣接の天然歯との間に確実に歯間ブラシが挿入出来るような空隙を確保することは、インプラント周囲炎の予防に極めて重要です。
インプラントを長期に、健全に機能させるということは、別な言い方をすれば、インプラント周囲炎を起こさないようにすることと言っても過言ではないでしょう。
インプラント周囲炎は、インプラント周囲にプラークが沈着することで起こるのですから、インプラント周囲を患者さま自身の努力によって清潔に保てるような形態を保有した歯冠修復物をインプラントや隣接の天然歯に与え、そしてその清掃方法を指導してさしあげれば、インプラント周囲炎は予防できます。
これは患者様自身の努力を信じる考え方であり、それは、患者様の人格を尊重する意味で重要な考え方だと思います。われわれは患者様の病を治すだけでなく、患者様が健康でいたいという意欲を支援することもわれわれの職責であるからです。
健康を支援する立場で歯科医療サービスを提供することは、インプラント医療においては、インプラント周囲炎を起こさない様なインプラント体の選択、生理学にかなった植立術式、そして、患者様自身が清掃し易い形態を具備した上部冠を装着することに他ならないと思います。